■ 第15回 2008年5月3日掲載
半端でないインドの暑さ

トパーズ号は次の寄港地であるインドのコーチンを目指し航行。陸地に近づくにつれ海も穏やかになり船酔いも治まってきた。コーチンはインド南端の西海岸に面し比較的教育水準は高いという。コーチンの港は世界的に天然港として有名だとか。確かに自然のままでこれといった建物も無く殺風景といった印象だ。ここでは水彩画を描こうと決めていた私は早速、画材道具一式携え下船することにした。家内は例によって市内観光に出かけた。

船をこよなく愛する私はトパーズ号を描くべく桟橋に降り立ったが暑いのなんのって、さすがインドである。並みの暑さではない。桟橋には金網が張り巡らされ、切れ目にはしっかり警備兵が立っており乗客のIDをチェックしていた。私は外に出るつもりは無く金網を背にイーゼルを立て鉛筆でデッサンをはじめる。50〜70センチのやや大きめのサイズだ。金網の向こうではインド人たちが興味深げに見入っている。見られ慣れている私、まったく気にはならないが、暑さのせいかどうも勝手が違い上手くいかない。結局、午前中でお絵描きは取り止め、私も街へ出かける事にした。今度はカメラを携えての外出だ。この船旅の為に新しく買い換えたものだ。

金網を出たとたんタクシーの運転手が寄って来た。しかも2人だ。結局、正直そうな方に決めた。昭和30年代我国で流行った三輪トラックを改良したような乗り物だ。ひと通り街を観て回ったがとにかく汚い。若い頃、給油でニューデリー空港に寄った事はあるが、飛行機からは降りずじまいだったので実際には初めてのインド旅行となる。船旅の良い点は飛行機に持ち込めないような大きな買い物が出来、日本まで持ち帰る事が出来る事だ。ただし我々のように乗船する時からダンボール6個もあるとそれもできない。船旅の際はなるたけ荷物は少なめにすべきである。欲しいものはいっぱいあったが我慢せざるを得なかった事が残念でならない。

コーチン市の散策を終え気分良く港まで戻ってタクシー代の支払いをと「いくら?」と聞くと「200ドル」だという。面倒くさいから払ったけど、これこそ悪評高いインド人のボッタクリである。まったく油断も隙も無いもんだと気分を悪くしての帰船だったが、カメラを盗られてはと最大の注意を払っていたお陰で「カメラは無事だったから、まッいいか!」と納得。疲れた体を癒すべく暫くベッドで横たわった。

そして先輩達と楽しい語らいのひと時をと思い、いつものバーに出かけた。魔が差したのか、カメラ持参で行ったのが一生の不覚となったのである。船室に戻ってカメラが無い事に気が付いた。夜遅くキャビンに戻って鍵を開ける為、カメラの入っているリュックをドアのところに置いて、そのまま中に入った。少したって気付いた時には既にリュックは消えていた。ショック!保険に入ってても何の役にも立たない事を後で思い知ったのである。(眞吾)