■ 第7回 2008年2月23日掲載
トパーズ号の食事は最高!
ベトナムでの半日は、私にとって、意外とゆったりとしたものだった。南国の夜の船上もエキゾチックでたまんなく良いものだ。ボートデッキでは男女の姿もチラホラと現れる。トパーズは夜の海をシンガポールに向けゆっくりと南下して行った。船上では、顔馴染になった人達のグループも出来始め、和やかなムードも漂ってきて、あっちこっちで談笑する声が聞こえてきた。最初はお互いに猫を被ってたとでもいうか、よそよそしかった乗客たちも緊張がほぐれてきたようだ。

3人だった我々の仲間にも1人加わり4人となった。物静かで彫刻的な顔の持ち主で、似顔絵を描く者としてそそるものを感じる。そろそろ最初の計画どおりストリートアーティストに変身しなくてはときっかけを探していた私に、いよいよその時がきたようだ。「よし、明日からストリートアーティストだ!」と心に言い聞かせ、ベッドについたものの、半面、不安でもあり複雑な思いでもあった。私自身、意外と気が小さいのである。

翌朝、家内は早々とラジオ体操にでかけた。そして朝食。これがいたって質素なのである。お粥か白米、血糖値の高い私はいつもお粥。おかずは納豆、肉と野菜の煮付け、昆布の佃煮、そして、フルーツといった感じだ。勿論、日によってメニューは変わる。以前にも客船で旅をしたことがあるが、食事ときたら比較にならないほどの豪華さで、血糖値を考えると怖いくらいだった。やはり長期の船旅となるとリタイヤされたお年寄りが多い。ピースボートの場合、若者も同じくらい乗船していて働き盛りの中間層は本当に少ない。船上での私は、食後は健康の事を考え、必ずボートデッキを1時間は歩いた。これが甲板80周ウォーキングとなる。良い汗をかいたものだ。

ところが、ある日、診療室で血糖値を計ってもらったら何と65。「手が震えませんか?」と先生から言われ、その日以来、ウォーキングはピタリと止めてしまった。いや、する必要が無くなったのだ。それだけ我々年寄りの事を考えてくれた献立だったのには感謝している。食べ盛りの若者達は和食を終えたらもう一つのバイキングレストランではじごをし、2度食いするのである。中にはそれでも足りずリュックにリンゴを2個、パンを2つ忍ばせて立ち去る女の子もいた。

さて、ストリートアーティストとしてデッキで店開きはしたものの最初の一人にとりかかったらさずがに手が震え、生きた心地がしなかった。(眞吾)