■ 第3回 2008年1月26日掲載
思いがけズ、サプライズ

トパーズ号は最初の寄港地ベトナムに向けゆっくり南下をはじめた。小学生の頃、朝礼で、ベトナム戦争について校長先生から聞かされた事を思い出す。また、コッポラの地獄の黙示録など悲惨な戦争映画が頭をよぎる。あのベトコンのイメージは子供心に決して良いものではなかった。後になって、ベトナム人は実は非常にインテリで友好的な人たちである事を知り、彼らに対する考え方も変わった。平和になった今のベトナムを早く見てみたいと興味津々。この度の旅行では一番行ってみたい国の一つとなっていた。

さて、船旅にはつきものの三種の儀について述べると、まず避難訓練で乗客全員がライフベストを着せられボートデッキに集合させられる。フィリッピン系のクルーカメラマンが一生懸命写真を撮っていた。次がお決まりのキャプテンのウエルカムディナーだ。そして船内生活の説明会。われわれ乗客はホールに集められた。例によってカメラマンが相変わらずパチパチと写真を撮っていた。家内が「ほら、お父さんみたいなお髭さんがおってよ!」。なるほど、見ると私とどっこいどっこいの髭の年配の紳士がこちらに向かって来られ、近くに席をとられた。これが後にサプライズになろうとはその時は夢にも思わなかった。

さて、その夜のディナーでの事である。ウエイターの案内でテーブルに着いたところ、私たちの他に頑固そうなおじいさん、品の良い、中年の女性、それにあのお髭の紳士との会食である。私を含め男3人は黙々と食事をしていたが、女性達は楽しそうにお喋りをしながらの食事である。しかも家内達の話の内容はどうやら私の事だったらしく、むっつりもっくりのお髭の紳士が、やおら「尾崎さん、笠木ですけど、同じ学校で…」と言われ、「エーッ」。ふいを突かれて私はびっくりして彼を見たが、どうも記憶にない。それもそのはず、およそ20年前の事で、お互いよぼよぼで髭もはやし、およそ当時の面影はない。判ろうはずも無い。彼は無関心を装いつつ、しっかり家内達の話を聞いていたようだ。とにもかくにも20年ぶりの再会であり、大感激した私達はそれ以来いつも一緒に行動する事になる。偶然とはいえ先輩と久しぶりにお会いできた事はこの船に乗船出来た一番の収穫である。

我々の船は5日間太平洋を南下した後、ベトナムの子供達の賑やかなウエルカムダンスのお出迎えでダナンに入港した。(眞吾)